イルカも泳ぐわい

自分が気に入った文章を取り上げるとゆーブログを何回か上げてきました。「美しく軽快な日本語」というタイトルでたしか「6」まで書きました。しかし、もーやめます。そもそも自分が好きな文章が世間的に美しいという基準から外れているうような気がするわけですよ。それで、今後はタイトルをつけずに文章をシンプルに紹介していくスタイルにしていきたいと思います。

アマゾンのおすすめで出てきたので、購入してみました。言葉のチョイスがたしかにキレッキレです。

イルカも泳ぐわい

※以下抜粋
「上京した当時から、郷愁に駆られる、という事が極めて少なかった。大阪の真ん中に生まれ、懐かしむ自然もなければ残してきた恋人もいない。東京に出てきてすぐの頃に働いていたバイト先に、青森出身の高田という三つ下の女の子がいた。高田は青森を愛していて、ことあるごとに「実家に帰りたい」と言っていた。冬になると「東京はあったかいねぇ。青森はもっと寒くて、この時期でも雪はめずらしくないよ。ずっと鼻水が出るから、授業中、机の上にトイレットペーパーを置いてたよ」と教えてくれた。情景が浮かび上がる最高の地元エピソードだ。これがいい。目を閉じると、青森に生まれた私の前には、かつて見た裏庭の雪景色が広がっている。

中学は2年が一番楽しかった。休み時間には、いつもトイレットペーパーを体に巻きつけてあかねちゃんとミイラごっこをした。あかねちゃんのペーパーはダブルだったから出来上がりが綺麗だったけど、しっかり巻きすぎるせいでほどくのに時間がかかっていつも先生に見つかった。でも先生の「古代で遊ぶな!」が好きで、それが聞きたくて次の日にはまた2人でミイラになった。

一度塚田が投げたペーパーが窓の外に落ちちゃって、みんなで外を覗いたんだけど、雪が積もってて、どこにあるのかさっぱりわからなかった。そしたら翔太がぶっきらぼうに「ほら」って指差した先に、ペーパーが少し動いたのが見えて、「おぉ!」「翔太やるじゃん!」ってみんな口々に言ったんだけど、翔太は勉強も運動もてんでダメで、おまけに愛想もない奴だったから、結局クラスメイトから、「白の微妙な違いを見分けれる奴」という評価だけを受けて卒業した。」

世界観とツッコミワードセンス

この文章のすごいところは、「目を閉じると、~~~~~」の後はすべて著者の想像だというところです。「あかねちゃん」も「翔太」も「先生」もすべて架空の人物。脳内で作った人々です。その割には本当にいそうな臨場感。体験した想い出のように感じるところがすごい。あと、ところどころのワードセンスですよね。「古代で遊ぶな!」はツッコミですよね。ジワジワきますね。書いてても(笑)。あと「白の微妙な違いを見分けれる奴」っていう表現。秀逸です(笑)それでは、また。

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